East Japan Barber GHQ KANAGAWA -バーバーブームに収まらない本気の“床屋”集団-

FEATURE

2018.8.15

近年メンズヘアシーンで巻き起こっているバーバーブーム。この世界的なムーブメントが到来するはるか昔からアメリカンクラシックに根ざしたヘアカットを追求するバーバー集団がある。その名も「GHQ」。関東屈指のバーバーから構成される彼らの神奈川支部メンバーに、猛威を振るうバーバーブームや床屋さんとしての姿勢を聞く。

伝統的な視線から見たバーバーブームの功罪

ーー代々床屋さんをやっている家柄の方もいるし、皆さん理髪師としての経歴が長いと思います。バーバーブームと言われている現在の状況への率直な感想を教えてください。

石渡　格好いいところだけじゃないんです、床屋って。華やかなところで憧れて入ってくるのも大歓迎だけど、わりと地道な仕事だから、志す人はそこを理解していた方がいいと思います。それはサロン（美容院）も同じかもしれません。

清水　流行りで入ってくると、人気がすぐ終わってしまいますしね。それに、僕らのターゲットはどちらかというとミドル世代。やっぱり店で働いている人の年齢に合うくらいのお客さんを対象にした方が、僕はいいのかなと思ってます。あと、逆に僕なんか若いときに髪を切らせてもらってた先輩たちって、リキッドを使った横分けをしていた方が多いんです。僕らは若い頃から自然とそれに接してきたから、逆に今は強みになってると思います。基礎がわかってるというか、いっぱい経験してきたので。でも、そういうおじさんって一時期少なくなっちゃった。

阿部　国家試験で課題に出るのが、今流行り…というか昔からあるバーバー系の髪形。バリカンを入れて刈り上げて、七三でビシっとまとめるような。そういう人って最近まで街にはいなかったんですよね。

石渡　50’sマニアか、ロカビリーくらい。

阿部　だから（試験の時に経験するくらいで）、実際に若い床屋さんが働き始めても接する機会が少なかった。その点、我々は昔のおじさんたちに鍛えられてきたから、基礎があるんですよ。

飯田　あと、今ってバーバーというふわっとしたブームに乗って、床屋さんの本質がない場合もあると思います。そもそも、カット、シャンプー、セットという総合調髪がきちんできるのが大切だと思うんです。もちろんブームの良い面もたくさんありますが、接客とか職業に対する考え方の違いはあるかもしれません。

石渡　実際、床屋さんと呼ばれようがバーバーと呼ばれようがどっちでもいい。理想は昭和軒のおじさん。原宿にあった伝説的な床屋なんですが、リーゼントがすごくうまかった。その職人的な美学に憧れますね。

長田　でも、確かにブームのおかげでお客さんは増えました。流行ってるからこそ、美容室的なノリの若い子たちも来てくれるようになって。僕らは昔っぽく一人一人に向き合ってサービスするというか、情報交換したりのんびりゆっくりしながらやる。それが彼らにとったら新鮮みたいですね。

阿部　うちも顔剃りを初めて体験した方に「気持ちよかった」と言ってもらえるし、また実際に来てくれる。単純なことだけど、それって嬉しいよね。

飯田　顔剃りもそうだけど、「前シャンプー（前にかがんでのシャンプー）」もびっくりするみたい。

石渡　美容室に行っていたお客さんが床屋さんに帰ってくることも多いかな。年齢的にサロンの雰囲気がそぐわなくなってきたというか。そうやって認知度が上がったという点ではバーバーブームもありがたいですよね。

清水　バーバーブームではなくて、“床屋ブーム”とか“理髪ブーム”にしてほしいけどね（来）。

長田　でも、やってる本人たちはアメリカンヴィーンテージが好き（笑）。

石渡　とても矛盾してるんですよね。