飲んで飲まれて男談義「おごられ酒」 ZEPHYREN 片倉 弦(GEN)
男として生まれ、男として生きるRUDOな人物。一筋縄ではいかない世界をサバイブする人物に話を聞きたい。あわよくば酒をおごってもらいながら。そんな思いでスタートした「おごられ酒」企画の第二弾。今回のお相手はファッションブランド「Zephyren(ゼファレン)」を手がけるだけでなく、MY FIRST STORY、Another Storyなどが所属する音楽レーベル「INTACT RECORDS」をも主宰する男、片倉弦。今年2月に惜しまれつつ閉店した彼が愛した老舗スナックで、酔いどれトークをしてきました。
ストリートブランドは渋谷でないとダメだと思うし、
そういう次のブランドが出てきてほしいなぁ。
ーー弦さんといえば音楽周りとも広い関係があると思います。昔から音楽シーンとの繋がりはありましたか?
GEN 僕はスケーターなので、メタルとかメロコアとかを音楽を聴いていて、当時のデザイナーのノーマンがバンドをやっていたんで、その影響でライブハウスによく行くようになりましたね。今も続けているA.V.E.S.T. project」(音楽フェス)もその頃からあって、10FEET、FLOW、ラッパ我リヤ、妄走族に出演してもらって、オールナイトのイベントをやってました。とにかく新しいことをやりたいと思って。メタルやメロコアバンドとヒップホップが一緒にやるイベントは当時無かったし、人と変わったことをやらないとダメなんだと思っていたんです。
ーーA.V.E.S.T. projectはもう13回くらい続いていると思うし、新しかったですよね。
GEN 当時はそんなイベントなかったですからね。やっぱりトンガリたかったんでしょうね、多分。人って他人を出し抜こうと考える生き物だと思う(笑)。でも、バンドマンって恩を忘れない人が多いんですよ。やっと裏切らない人たちに出会えたというか。ロックって対バンの文化があるし、それもすごくいい。だからファッションでなくバンドの方に寄って行ったというのがあるかもしれません。
ーー勝手に弦さんってサービス精神の塊だと思ってるんです。普通の人って同い年くらいと付き合う方が楽。でも弦さんって若者が慕ってくるし、彼らと一緒に飲んでても率先して裸になるじゃないですか(笑)。それはサービス精神なのかなと思ってたんですよ。あえてやっているというか。それが逆に疲れないのかなと思うこともあるんです。
GEN 確かに疲れることもありますよ。でも、別にへりくだってるわけじゃなく、目線を落とすことも大切。だって若い人に比べたら僕の方が色々知ってるはずだし、だからこそ一緒にいることによって何らかのものを感じ取るやつもいる。だから、最初から上から目線で行くのはダメだし、一緒に飲んで伝えられることは伝えたいなと。二軍だと話していた頃に、俺は一軍から抑えられたような感覚があるんですよ。今思えば実際そんなことはなかったんだけど、「それはこうやって倒すんだよ」って今教えてあげられたらいいじゃないですか。本当はブランドなんて俺がやってるようじゃダメで、もっと若いやつがやるべきだし。でも、嫌なことは一切ないんですけどね。サービス精神というか…欲しければくれてやるくらいにしか思ってない。群れたいわけじゃないけどね。あと、損得勘定ではなく困った時にどれだけ人が助けてくれるかだと思う。今はサブサエティの事業を手放してしまったわけだけど、途方に暮れてた時に10FEETとかロットングラフティーは助けてくれたんです。本当はファッションをやめようと思ってたんですよ、サブサエティから離れた時は。ゆっくりしようなんて思ってたんだけど、友達のブランドの展示会に行ったら、すごく楽しそうだった。それがすごくムカついて(笑)。そんな時に、ロットングラフティーの「ポルノ超特急」というイベントがあって。開催の一ヶ月前かな、新しいブランドはじめようと思ってそのイベントに出店のお願いをしたんです。それを快く快諾してくれたのが、「Zephyren(ゼファレン)」の始まりです。
格好いい人間が周りにいっぱいいるので、
そこに何とか俺もしがみついていきたいですね。
ーーゼファレンの意味はなんですか?
GEN 近代英語なんですけど、格好いいとかセクシーとか以外に“自分のエゴを貫き通して勝つ”という意味があるんです。あと、自分にとっての最後のブランドだと思うから、(アルファベットの最後の)「Z」から始まるのもいいなと思って。いろいろ言ったけど、僕はめちゃくちゃポジティブなんですよ。もうサブサエティにも思入れがないといえばない。昔の話が嫌いだって言ったように。
ーーそのまま辞めた方が簡単だったとは思うんです。でも続けてる理由はなんでしょう。
GEN 続けるだけじゃなくて、さらに前線にいないと意味がないと思う。そこに仲間もいるし、彼らに負けていたら一緒にはいられない。だから、彼らに追いつけ追い越せじゃないけど、対等な立場でやらないと意味がない。もちろん金銭面やスケジュール面で大変なことはいっぱいあるけど、それをしないとブランドとしてどうなのと。やっぱり不良だし、反骨心がないとダメだと思います。
ーーゼファレンの今後のイメージはありますか?
GEN 今はアーティストと関わることが多いから、彼らが映えるものっていうのを最近はずっと考えていて。あとは、生き様を見せるようなブランドかなと思っています。でも、本当は若くて格好良いブランドが出てきてほしい。ストリートで。俺は渋谷がすべてだと思ってるんです、東京の発信は。だからストリートブランドは渋谷でないとダメだと思うし、そういうのが新しく出てきてほしいなぁ。「A.V.E.S.T. project」って、バンドからやって欲しいと言われてはじめたイベントなんです。だから、他でもそういうのを仕掛けられるブランドがあれば良いなと思ってます。ファッションって小さいジャンルだし、だからこそ他のこともできるブランドの方が楽しいんじゃないかな。
ーー色々切り捨ててきたかと思うのですが、これだけは残したいというものはありますか?
GEN 後継者がいないので、ゼファレンはいつかなくなると思う。バンドは(GENさんが手がける)レーベルがあるから。だから、そっちを深くやっていくと思う。でも、ゼファレンをいつかやめると言っても同世代のバンドが続けている以上、俺は前線にいないといけない思いがある。そうじゃないと裏切ったことになる。確かに一度やめようとは思ったけど、それは間違いだとわかった。仲間たち含めて格好いい人間が周りにいっぱいいるので、そこに何とか俺もしがみついていきたいですね。
ーーしがみつけなくなったらどうします?
GEN それはスナックやるしかないでしょう(笑)。
片倉 弦
1974年10月5日生・埼玉県出身
2000年にショップ兼ファッションブランド「SUBCIETY」を発足し、翌年には「HiLDK」を立ち上げてストリートシーンに参戦。また、今は亡きPay money To my PainのKとともに「NineMicrophones(ナインマイクロフォンズ)」もスタートさせる。現在は2014年に始動したファッションブランド「ZEPHYREN」のディレクターを務める。また、音楽シーンとのつながりも深く、ライブプロジェクト「AVEST project」やアーティストのマネージメント、レーベル運営を行うなど、多方面で活躍している。
ZEPHYREN
zephyren.com
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*対談場所
カラオケスナックながさき
昭和34年創業の伝説的スナック。渋谷の生き字引的存在の名物ママと一杯を楽しめる空間は、芸能人をはじめ数多くのファンを生んだ。昭和レトロが色濃く残る渋谷の百軒店で営業を続け、2019年2月に惜しまれつつクローズ。