飲んで飲まれて男談義「おごられ酒」 ZEPHYREN 片倉 弦(GEN)
男として生まれ、男として生きるRUDOな人物。一筋縄ではいかない世界をサバイブする人物に話を聞きたい。あわよくば酒をおごってもらいながら。そんな思いでスタートした「おごられ酒」企画の第二弾。今回のお相手はファッションブランド「Zephyren(ゼファレン)」を手がけるだけでなく、MY FIRST STORY、Another Storyなどが所属する音楽レーベル「INTACT RECORDS」をも主宰する男、片倉弦。今年2月に惜しまれつつ閉店した彼が愛した老舗スナックで、酔いどれトークをしてきました。
(「ながさき」は)秘密が守られそうな気がするんです。
何を喋っても漏れないというか。
ーーちょっと話題を変えまして、今回の企画の場所として「カラオケスナックながさき」を選んだ理由を教えてください。
GEN ここはよく来てるんだけど、2月いっぱいで閉店するから記録として残しておきたくて。58年間やってるんですが、5、6年前から来ています。もともとはフラッと来たんですよ。基本的にヤバそうな店に入っていくのが好きなんで(笑)。秘密が守られそうな気がするんです。ここなら何を喋っても漏れないというか。若い女がいるところだと情報が漏れたりするし。あとカラオケもできてナイスミドルの方も多いし、チャラチャラしてなくて雰囲気がある。あと何と言っても89歳のママが素敵。多い時は週4で通ってましたね。近くにいたら必ず寄るし、歌いたい時は1軒目から来ますね。昔は憲兵隊が来たとか、『太陽にほえろ!』の撮影で使われたりとか、歴史を感じるのがいいですよね。僕の特等席は今座っているところ。ここに立って上半身裸で歌うのが僕のスタイルです(笑)。
*ここでママが同席
ーー迷惑なお客さんじゃなかったですか(笑)?
ママ いえいえ。最初はおとなしかったんですよ。もうずっと通ってくださって身内みたい。社長(GENさん)のおかげで最近はお客さんも若返ったんですよ。
ーー今後のご予定は?
ママ 何も考えてないんですよ。(GENさんが住んでいる)三宿あたりにブラッと行くと思いますよ。私は池尻大橋に住んでますから。
GEN 飲みたいですよね、一緒にね。
ーーそこで新しくお店をやるとか。
ママ そうですね、新しくやってもいいかな(笑)。
GEN 僕、お金出しましょうか(笑)。
ママ 家の近くの方が都合がいいですものね。二人でやりましょうか?
GEN 物件探しますよ(笑)。
ーー何で「ながさき」という店名なんですか?
ママ 長崎生まれだからです。だから次は大橋でいいですね(笑)。
ーーながさきの開店はいつ頃ですか?
ママ 昭和34年。約60年前です。この辺にはこういうお店がびっしりありました。だから百軒店と言うんですよ。奥は円山町だから芸者衆もいっぱいいて。今ではホテル街ですけどね。
ーー話せる範囲で、こんな人来たとか教えてください。
ママ 昔ですけど、楽しい夜の遊び場、色街があるって本に書いてくれたのが、亡くなった(立川)談志さん。寄席やるところなんてないのに、よく来てくださいましたね。
ーー創業当時からのものって残ってますか?
ママ 壁紙は張り替えたりしてますからね。なんだろう、創業当時のもの…この灰皿ですね。サントリーの。今ないでしょ。
GEN すご〜い。一個欲しいです。
ママ 昔はカラオケなんてないから流しも来てました。3曲100円。昭和33年、私が東京に来た時にラーメン一杯35円だった時代です。道玄坂を下ったところに、きゅうりとかナスとかもなってましたからね。畑があったんですよ、東京のど真ん中に。NHKのところもそうでしたよ。どろんこ街。それに比べてここは石畳。青線があったし、華やかだったんですよね。進駐軍だっていっぱいいましたよ。
ーー今はもう様変わりしていますね。
ママ (昔と比べたら)考えられないですよ。小さなマーケットもありました。五十軒くらい。今はマンションになっちゃったけど。
ーー楽しかったですか?
ママ すごく楽しかったですよ。いろんな方にお世話になったし、お会いできましたからね。
ーー逆に大変なことや嫌だったことはありましたか?
ママ ありましたよ。それこそ火事と喧嘩は江戸の花で、毎日毎日。酔っ払いばっかりで棒持って叩き合ってたり。今の方がずっと平和よ。あと最初はヤクザが多くて邪魔されてね。チャカとかドスとかリアカーに山盛り積んで歩いているのとかよく見ましたよ。「捕り物(ケンカ)だよ〜!」なんて声が上がると、そういうのばっかり。みなさん大正時代の人たちですよね。でも、夫とともに若者二人で始めたんですが、「今に潰れるから見てろ」なんて言われたけど、ここまできましたね。
ーー出禁の人もいました?
ママ 聞き上手ね(笑)。
GEN 僕がギリギリですからね(笑)。
ママ 何十年も経ったからね、だからこそ良かった思えることはいっぱいありますよ。