飲んで飲まれて男談義「おごられ酒」 NOname! 古俵大輔
大人になると、いろいろな経験を重ねているもの。RUDO界隈にいる人々なら、その濃度は一般人以上に高いのだ。そんな男に一杯…ではなく、いっぱい奢ってもらいながら話を聞くという担当役得企画が「おごられ酒」だ! 今回のお相手は神戸で人気のセレクトショップ・ノーネームと、ファッションブランド「DRESS HIPPY(ドレスヒッピー)」&「AT-DIRTY(アットダーティ)」を手がける古俵大輔。彼の行きつけである2軒をハシゴしながら神戸男に話を聞いた。
いつも適当に出してって頼むんで、メニューの名前を覚えてないんですよ(笑)。
ーー今日は古俵さんに会いに、神戸までやって参りました!
古俵 過去の「おごられ酒」を見たら、みなさん結構言ったらダメそうなことも載ってますよね(笑)。
ーー相手の方にお任せしています(笑)。
古俵 なんでも書きそうだから怖いですねぇ(笑)。
ーーそうなったらそうなったで(笑)。「ズドコノン」(一軒目の対談場所)、いい雰囲気ですね。
古俵 ここはなんでもうまいんですよ。だから、お任せで大丈夫です。彼(店主)は「ノーネーム トアウエスト」があるあたりでコーヒースタンドもやっているんです。
ーーこちらの魅力は何ですか?
古俵 同世代のオーナー会で知り合ったんですが、単純にうまいんですよ。ここは二階もあるんですが、「JCM INK TATTOO」というタトゥー屋さんとか僕ら周りの連中と来てますね。オープンして1〜2年だと思います
ーーでは、料理のオススメは?
古俵 いっぱいあるんですけど、いつも適当に出してって頼むんで、メニューの名前を覚えてないんですよ(笑)。なんだっけ、ズポテサラだ。タクアン乗ってるやつ。
ーーポテサラ、抜群ですね! タクアンが入ってるから歯応えもあって。「ノーネーム」の皆さんで来ることもあるんですか?
古俵 みんなもそうですが、結構スタッフ個人個人で来ていると思います。
ーーリーズナブルだし、神戸駅からすぐだし、便利でいいですよね。
芯が何かはわからないけど、信念はありますからね。
ーー今日は古俵さんのルーツを聞きたいなと思っているんです。洋服に関わるようになったのはいつですか?
古俵 20歳の時にいろんな仕事をして、その時結構資金が貯まったんですよ。それでいざ会社にしようと思ったんですが、やり方がわからなくて。何が儲かるか、何がやりたいか、何もかもわからないのに(笑)。でも、とりあえず会社をやりたいっていう思いがあって、それで服が昔から好きだったし、アパレルをしようと思ったんです。それで勉強しようと、当時神戸に結構あった「ノックアウト」という店で働こうと思って、すぐに飛び込みで行ったんですが、「募集してない」って言われて。こっちは家も出てしまっていたので、じゃあ量り売りの店があるからって、そこで働かせてもらったんです。そのお店、2ヶ月後に潰れる予定だったんですが、人がいないからって。でも頑張ってたら、店が潰れたあとも他の部署に残してくれたんです。
ーー洋服が好きになったきっかけってあります?
古俵 多分目覚めたのはこの時ちゃうかなと思うのは、僕の地元の板宿というところに「ニノコ」というヤンキーショップがあって、みんなそこでスカジャンを買うんですが、それがあまりにも格好悪くて、僕は「ショット」の革ジャンを買ったんです。みんなスカジャンだけど、僕は革ジャン。そこから拍車がかかりました。当時はバイトしてたんでお金が貯まったら、「レッドウィング」を買ったり、ヴィンテージを買ったりし始めたんです。
ーー周りはヤンキースタイルということは、一人で浮いてたんじゃいですか?
古俵 無茶苦茶浮いてましたよ。十代の頃はアフロとかドレッドにもしてましたから。
ーーそういうスタイルになっても、変わらず「レッドウィング」とか、今やっていることに通じるトラディショナルなものも好きだったんですか?
古俵 みんなが思う以上に、僕はいろんなジャンルが好きなんです。普段やっているノーネームとは違うものも。だから、この先も変わっていくと思います。その時に好きなもの次第で、きっと今とは違うものを作っている。今だって昔と比べれば作っているものが違いますし。デザインよりも着心地重視になって。だから、「自分が絶対にこうありたい」っていうのはないかもしれません。まぁ、ただの格好つけなんじゃないですかね(笑)。
ーー若い頃に影響されていたものはありますか?
古俵 先輩とかからはあまりないですね。「ハーレー(ダビッドソン)」だって周りでは20歳くらいで乗るのが当たり前だったけど、僕はちょっと遅くて25歳のときなんです。それまで興味が湧かなかったんですよ。だけど、アメリカでも「ハーレー」のイメージが変わってきて、「ディッキーズ」を履いてカジュアルに乗ったりとか。それを知った時に自分の中のファッションとリンクしてから乗り始めたんですよ。もともと「バイカーだからこんな格好をしないといけない、こんな曲を聴かないといけない」とか、そういうのがつまらないと思ってたんです。
ーーノーネームを立ち上げる時も、「こうなりたい、こうありたい」というのは無かったんですか?
古俵 無かったですね。例えが合ってるかわからないですが、サザンオールスターズって、いろんなことをやってもサザンオールスターズじゃないですか。「ノーネーム」もそれと同じであることができると思うんです。いろんなことをしても、“「ノーネーム」らしさ”はあると思うし、そもそもいろいろなことをやりたいですしね。
ーーブランドには、芯の強さを主張したり、こだわりを言いたがるところもあると思います。そういうタイプの人たちから、「お前ら芯が無いな」とか揶揄されることはなかったですか?
古俵 多分ね、僕が作ってるものに対しては、そう思われていないと思います。もちろん僕も芯は持ってますが、「うちはスニーカー履かないから」とか、そういう芯ではない。それって違うと思うんです。芯が何かはわからないけど、信念はありますからね。“男らしい服を着ておきたい”とか。でも、いろいろ可能性を狭めるとファッションじゃない気がします。「こんな服が欲しいな」とか日常の想像から色々生まれてくる。
ーー古俵さんは代表としてショップもブランドも舵をとってるじゃないですか。これを次世代に残したいと思います?
古俵 まだまだ先だと思うんで考えられないですが、まず100%ないのは子供に継がせること。自分が死んだ後もどうこうとは思わないです。スタッフもそれぞれの人生背負ってるわけで、彼らが年をとった時に「あそこに入って良かった」と思ってもらえないと辛いので、そこは叶えられるようにと考えてますね。
「こんな服が欲しいな」とか日常の想像から色々生まれてくる。
ーー今は何人でやってるんですか?
古俵 最初は僕を含めて2人で、今は5人です。
ーーショップやブランドって、企業でもあるじゃないですか。設立から9年続くうちに、売れるものと売れないものって肌感覚でわかってきていると思うんです。当然スタッフが増えると売り上げも大事になってくるし、リーダーの古俵さんが今やりたくないアイテムでも、売れるならやらざるを得ないとか。やりたくなくても、やるというか、その時の折り合いってどうやってつけてますか?
古俵 いや、現段階ではそれなしでやれてるんで、ありがたいです。僕は全部好きですよ、うちの服。本当に欲しいから作ってるんです。やっぱり服を作る時っていろんなシチュエーションを思い浮かべるというか、家と会社の行き来だけだったら服作りなんてできないと思うんです。やっぱり遊びまくらんと(笑)。遊んだりいろんな経験をすると、「こんな服が欲しいな」とか日常の想像から色々生まれてくる。「ここに行きたいから、こういうのが欲しいな」とか。例えば「アットダーティ」はバイカー向けでもあるんですが、実際に僕らがバイクに乗ったり色々しないと作れないと思う。乗って分かる必要な機能美とかもありますし。そういうのを毎日やってたら、いらないものを作る隙間がなくなってくるんです。もしそれで生活ができなくなったなら、その時は売れるものを作るんじゃなく、それこそ僕ではない違う人が作る時なんじゃないですかね。あと、逆のこともしてます。これは売れてるというアイテムでも、僕が飽きたらやめちゃうんです。それってオーナーとしてはダメですよね(笑)。
ーー「ドレスヒッピー」でも同じですか?
古俵 「ドレスヒッピー」でもそうですよ。
ーーアットダーティはバイク。では、(飲みに行くとか遊びのシーンを想定した)「ドレスヒッピー」のためには、どんな遊びをしてるんですか(笑)?
古俵 それはもう……男同士で語らってますよ(笑)! 語らったり、いろんなところに行ってるんですよ。
ーー女性的なものは……(笑)?
古俵 女性的なものは……それぞれじゃないですか(笑)。
ーーモテたいって、やっぱり男の根本じゃないですか。
古俵 その通りだと思います(笑)。
ーー昨年発売したRUDO2019AW号で、「ドレスヒッピー」を着てもらったミュージシャンの渡辺俊美さんも、「バンド始めるのなんて、モテたかったから」って言ってます(笑)。僕は、洋服って何かにしてくれるというか、着てる人を変えてくれると思うんです。だからこそ、それを作ってる人たちは格好いい人であってほしいという気持ちがあるんです。
古俵 でも、柔らかく書いといてください(笑)。「アットダーティ」で言えば、違うバイクに載ると違うところに行きたくなるし、そうなると違う服が欲しくなる。この前うちのスタッフがイベントをやった時、彼から「ジャージ欲しいですね」って言われたんです。僕の中にはそう言う気持ちが無かったんですが、行動すると色々違うものが生まれるんだって思いました。確かに、彼の話を聞くとセットアップのジャージが欲しくなる。やっぱり体験したものから本音というか、本当に欲しいものが出てくるんだと思います。