5周年を超えて輝きを増す“ネイティブジュエリー”の未来 -The Future of GOD SUNS-
インディアンが育んだカルチャーに敬意を表しつつ、東京ならではの独自のストーリーを作品に込める〈GOD SUNS(ゴッドサンズ)〉。こだわりを持って表現する“ネイティブジュエリー”は、5周年を迎えてますます美しさを増している。ブランドの中核をなすYODA兄弟に、今の時代だからこそ生まれ、継続し、そして未来へと羽ばたく自らの立ち位置を聞いた。
「一個一個がすごく綺麗だね」と感動してもらえるようにしたい
ーー早いもので〈ゴッドサンズ〉が創業してから5周年。おめでとうございます。
YASUYUKI YODA(デザイナー・以下:YY) あっという間でしたね。自分が年を取とったからかもしれませんが、10日間くらいに感じます(笑)。でも、まだまだ反省点だらけで、至らないところばかりです。注文をさばくので一杯一杯になってしまった部分もあるので。本当はウェブとか通販サイトも充実させたいのですが、まだまだ手が回らないところばかりで、自分が思い描いていたビジョンには全然至らないですね。5周年に合わせて[ウォーボンネット]シリーズを産むこともできましたが、もっともっと時間が欲しいというのがありました。
MITSUHIRO YODA(彫金師・以下:MY) [ウォーボンネット]シリーズは、実は3年くらい前から温めていたアイデアなんです。僕はバイクが好きなので、「デニムベストに付けられるプレートが欲しい」と思ったのが発端でした。今回はイーグルインディアンのデザインになっていますが、そのようなものをプレートにして、デニムなどに付けたら格好いいんじゃないかと思って。個人的な思いなんですけどね。
ーーそんなに前から決まっていたんですね。では、もうすでに10周年に向けたアイテムの構想もできているのでは?
MY 自分はまだあまりないかな(笑)。こういう話はたまに兄ともしますが、彼の中にはもうすでに何となく構想があるみたいでね。自分は今かっこいいモノを妥協なく作る、これに全身全霊を込めています。話しを戻しますが、僕も兄と同様で、これまでの5年は早かったですね。ありがたいことに一年目からオーダーも数多くいただいて、それを作っていたらアッという間に過ぎた印象です。当初はアイテムを作るのはほぼ僕一人だけだったので、毎日手を動かしていたし、もうそんなに経つんだという感覚です。
ーーブランド創業当時は、お二人含めてスタッフ3人だけでしたよね。
YY そうですね。今では10人くらいになりました。
ーースタッフもそうですが、この5年で変わった部分と変わらなかった部分がブランドとしてあると思います。
YY そうですね。変わらなかった、というか変えずにやってきた部分は、やっぱり品質です。ブランドスタート時に決めたコンセプト“最高な品質のものをお客様に届ける”というのを今も大事にしています。細かい部分を気にせず数をさばくより、品質にこだわることが第一優先。納期は遅くなってしまいますが、品質はきちんと守りたいんです。あと、もう一つの〈ゴッドサンズ〉の醍醐味は“サイズ幅の無限化”。従来のネイティブジュエリーって、ある程度サイズレンジが決まっていました。なのでその常識を逸脱するためにも大振りから小振りが好きな方、さらに男女関係なく、誰もが皆自分好みのサイズ感でカスタムを楽しんでもらいたいという想いで、サイズ幅を広くラインアップするようになりました。また2022年には、さらに常識を覆すようなミニマム化した作品を生み出しました。こちらは“女性のためだけのネイティブジュエリーがあっていい”というコンセプトから立ち上げた”Ladies Line Produced by GODSUNS”という新シリーズで、今後さらにいろいろな展開をしていく予定です。是非こちらもの動向にも注目してもらいたいですね。
MY ミニマム化した作品を作るのは、細かすぎるため制作するのがとても難しいんです。ただ今では成長もしたし、難なくこなせるようになってきましたね。目視部分と感覚で彫る部分とか(笑)。また今までにないサイズ感や目新しい作品を生み出すことが、すごく楽しくもなりました。サイズ幅が広い分、製作量も大変ですが(笑)。でも「自分に合うサイズ感でカスタムが思いっきり楽しめる」と嬉しそうにスタッフに話しているお客様の顔を見ると、自分も嬉しくなるんです。また品質に近い話ですが、僕は彫金師なので、一個一個細かく妥協なく作り込んでいるところや、品質維持のために火ムラ処理をしてから、磨き工程も通常の何倍もの時間をかけて一点一点じっくり行うので、場合によっては磨き前の彫った時よりも少し薄くなる時もあります。ですが、それすらも手間暇惜しみなく“一つの作品として完結したい”ので最後まで妥協はしません。薄くなった場合は最終でもう一度彫り込んでいき、全体的に最高の状態にしてからお客様の手に届けます。そこまで行き着くと、本来のシルバーの透明感、輝きを極限まで引き出して彫った線も、繊細で美しく、かつ力強い線になります。兄が言うアクセサリーという概念ではなくジュエリーという概念の構想は、常に自分も共有して意識しながら製作しています。これはもう僕たちの性格なので、とことんこだわりたいんですよ。特注品に関しても今も昔も最初から最後までハンドメイド。自分のプライドと意地を常に持ち、初心はいつも忘れずに一生懸命製作してます。
今の僕らのトーンにラインナップも合わせていかないといけないとも思っています
ーー確かに品質の高さ、サイズの豊富さは、ずっと変わらないですよね。では逆に、変わった部分はありますか? 5年続けていくうちに、物作りもそうですが、運営面とかでも色々上手になっていくと思うんです。その点で、成長を実感したところや、“昔の自分ではできなかったことが今できている”とかはありますか?
YY アクセサリー業に初めて携わるのならあったかもしれませんが、僕は下積み時代もあるので、それはあまりないですね。それよりも、当時のもどかしさが根っこにあって。過去にお客様を困らせた経験から、「品質って何?」というのをずっと考え続けてきました。ただ、レベルアップできたかなと思っているのは、僕らの作品に込めている物語性ですかね。本来インディアンの文化で生まれたモチーフや、自然、精神的な分野のものには、深い意味合いがあります。それが昔から大好きでよく調べては勉強し、以前に従事していた職場でも、ずっと学んできました。そういう従来から伝統的に受け継がれてきた意味を理解した上で、今の社会を生きてきて素直に感じたことや、リアルな経験で得た感情などを自分のフィルターに通して、率直に感じたことをデザインを考えながら思い描いていき、オリジナルのストーリーを生み出す、要は作品にバックボーンを持たせたいんです。作品に意味を与え、命を吹き込んであげたいんです。今はそんな作業に生き甲斐を感じてます。デザイナーや作り手だからこそできる仕事だなと。インディアン文化に尊厳を持ち、従来の意味合いを守りながら、今を生きるこの瞬間に感じたことを線で結ぶながら、面にしていく事が自分の役割かなと。確かに〈ゴッドサンズ〉もネイティブ風ですが、だからこそ、新たな時代に向けて僕たちにしか確立できないオリジナルのストーリーが大切だと思っています。
MY 昔からある定番的なアイテムは、今の時代ありふれています。しかも、それぞれのアイテムにブランドの個性も活かされたものだって、世にたくさんあると思うんです。そういった流れが受け継がれていく中で、定番的なモチーフを使わないのではなく、そこに自分たち流に新しい解釈を入れていく。例えば〈ゴッドサンズ〉の[白頭鷲]シリーズというのがあるのですが、イーグルがベースではあるものの、頭と尾をプラチナにして、顔は口目金に、さらに白頭鷲専用の足は金と爪先SVで、硫化して育てていくことで“貴方だけの白頭鷲を育てることが出来る”というコンセプトのもと生まれた作品です。これは、あまり他では類を見ないと思います。また“石に生命を吹き込む”という発案から、石に透過性があるモノは、イーグルでもバングル、リング、ペンダントでも関係なく“全て穴あけ加工”を施し、石に光の道を作り出し、心に響くような神秘的な作品へと昇華させる。人々を感動させたいという兄の発案であり、ずっと今もブランドのオリジナル作品として製作しています。このような類を見ない作品をいかに生み出していけるかも、日々の挑戦だと思ってます。
ーー近年はコロナやウクライナの問題などもあって、暗い話題も多かったです。だからこそ、今まで生み出してきたシリーズや作品などから、世の中の希望になるメッセージ性も込めていましたよね。
YY はい。ずっと今の時代にだからこそ表現できることを考えていたし、社会情勢へのメッセージも作品に載せたいというのはありました。それを反映した物語作りは、5年前より強くなっていると思います。それを重ねて、〈ゴッドサンズ〉のオリジナリティがだんだんできてきましたね。過去作品ではキャスト&リリーシリーズとイーグルフェイスシリーズからなる“空と大地の物語”。昨年では“RAINY SKY TO THE EARTH”や“EAGLE×SUNBURST”。また今回の5周年記念“EAGLE×INDIAN”など様々なシリーズ作品には必ず背景にストーリーや隠れたメッセージを込めています。それは今の社会情勢を見て、自分なりに感じたことをストーリーにしていく中で、作品を見て頂いた方へメッセージを送りたい、作品に存在意義をもたせたい、そういう想いを胸にブランド創立以来ずっとやってきました。今の世の中や誰かにとって“確かな意味あるもの(作品)”を残したいんだと思います。僕らのイーグルは大~ベビーと4種ありますが、顔が全て異なります。生きている動物なので、よりリアルに大人へと成長していく過程が見れるように製作しているんです。また、オリジナルカスタムができる鹿革のレザーマスクやイーグルフェイスをデザインにしたドアオープナーなどの奇抜なアイテムも、世界中を混乱させたコロナという感染ウイルスによって、当たり前のことが当たり前でなくなった世の中に対する、自分なりのアンサーだったと思います。反骨精神ですね(笑)。今を生きている意味が何かを探る、自分なりの挑戦として今後もやっていきたいです。
ーーデザイナーであるYASUYUKIさんの一方、アクセサリーを形にするMITSUHIROさんは、実際に物作りを進める上で、上手くなったなぁと思うことはありますか?
MY 彫りは細かくなりましたね。先ほどサイズ幅の話が出ましたが、アイテムが小さくなっても難なくできるようになったり。そんな時はレベルが上がったなとは思います。5年前では作れてないよなって(笑)。常に進化し続けたいって思う自分がいる。だからこそモノ作りは最高に楽しいんですよね。
YY うちの彫金師はこれと言ったらとことんやり切るまで辞めない性格(笑)。そこがまた魅力なんだと思います。もちろん二人だからこそ作れた作品も多々あると思います。それらの経験を大事に〈ゴッドサンズ〉というブランドとしても、今の僕らのトーンにラインナップも合わせていかないといけないなとも思っていますね。
ネイティブに近すぎず、だけど遠すぎないというバランスに注意しながら続けていきたい
ーー昔のアイテムの良さもあるし、今のアイテムの良さもある。そこをどうラインナップに反映させていくか、難しいバランスですね(笑)。さて、5周年を迎えはしましたが、今後もブランドは続きます。次の5年で計画していることはありますか?
MY もっとレベルアップするのはもちろん、バイクをカスタムできるものとか色々作ってみたいですね。アクセだけじゃなく、作品の幅をもっともっと広げたいという思いは強いです。
YY バイカーに合う作品もいいね(笑)。ただ、バイカーファッションにネイティブのデザインなどをミックスして、目新しいモノにもチャレンジしていきたいね。他にも、自分たちがその時に興味あるものとか。
MY 灰皿とか、植木鉢とか。ボタニカルが人気ですが、植木鉢をネイティブで作っている人はまだ少ないと思うので、普段作りそうで作らないものとかいいかも。どう?
YY 植木鉢にイーグルや爪を付けたりね。デニムベストやレザージャケットとかを、コテコテになるぐらい本格的にワンメイクカスタムをするとかも良いよね。やるならやり切るのが好きな性格なのでとことんやりたいね。
MY ネイティブカルチャーとバイクカルチャーをうまく融合させていきたいね。ただ、僕はどうしても好きなものしか作りたくないってなっちゃうから、もっと兄(YASUYUKI)からのアイデアが欲しい(笑)。
YY バイクの知識や歴史の背景など、もっともっと深く追求し学んでいかないとだね(笑)。ただうちのスタッフはみんなバイクカルチャーが大好きだから、まだ先の話だけど本格的に新しいコレクションとして、バイクとネイティブカルチャーから生まれる新しい作品やストーリーも、新たに考えて行きたいですね。
ーーデザインに加えて会社の運営についても考えるYASUYUKIさん、自分が好きなものしか作りたくないMITSUHIROさん。お二人が始めたブランドですが、お二人の考え方が真逆な時もありますよね。
YY う~ん、確かに(笑)。兄弟なので、相手の言っていることが正しいとわかっていても、素直になれなくてお互い認めたくないというときもあるんです。それでまとまらないことはしょっちゅうです。ただ、兄弟だからこそ元に戻れる。他の仕事仲間だとすると、喧嘩して関係がこじれて、そのまま辞めちゃうとかあると思うんですが。自分たちは作品に対するこだわりとか方向性も遠慮なく言い合える。逆に言えばそんな遠慮なく言い合える環境は、とてもいいかもしれません。それで最高に良い作品が生まれることもたくさんあったので。ただ喧嘩は良くないですけどね。自分たちはいつまでたっても子供の心をもった大人なんだと思います。たぶんこの先もずっとね(笑)。
ーーそうなんですね(笑)。でも、ネイティブジュエリーを日本文化やバイカーと組み合わせてみようなど、二人とも〈ゴッドサンズ〉の世界観を広げていこうという共通した考えがある気がします。
YY そうですね。従来の先人達が築き上げてきてくれたネイティブジュエリーを大事に受け継ぎながらも、もっと新しいことにチャレンジしていきたいです。オリジナルを生み出すことは難しいことではありますが、今は自分と弟、また〈ゴッドサンズ〉が好きで一緒に働いてくれる大事な仲間がいて、ひとりじゃないんです。二人で築いたブランドですが、今後は新しい世代にも受け継いでほしい。なので今いる仲間と共に、日々全力で精進し、力を合わせて、たくさんのことにチャレンジしていきたいと思います。新しくレディースラインも始動したばかりですが、今年か来年かまだ未定ですが、自分がやりたいプロモーション/ムービー特集も必ず作品としてシリーズ化していく予定。〈ゴッドサンズ〉の世界観をもっとより多くの方へ伝えていけたらと思います。次世代に向けたネイティブジュエリーブランドとしてさらに進化していく〈ゴッドサンズ〉を見ていてください。
photo:TSUTOMU YABUUCHI(TAKIBI)
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GOD SUNS
ネイティブ系アクセサリーブランドで研鑽を積んだクリエイティブデザイナー・YASUYUKI YODAと、彫金師・MITSUHIRO YODAの双子を中心に2017年に設立。イーグルやフェザーといったネイティブモチーフを得意としながらも、性別や年齢、スタイルを問わずに楽しめる“新たなネイティブジュエリー”を追求している。従来のブランドにはないラグジュアリーさや、極小〜極大を取り入れた幅広いサイジングにも定評がある。
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